研究概要 |
本研究では、老化脳における神経可塑性の分子機構をアクチン微小管骨格系に係る構造的側面から解明し、老化脳における機能低下の原因を探ることを目的としている。 昨年度から引き続き、(1)in vitro神経細胞老化モデルの樹立、(3)老化脳におけるチューブリン脱アセチル化酵素HDAC/Sirt2の機能性、(2)N-Shc系分子によるスパイン形態制御の分子機構について結果を得た。 (1)in vitro神経細胞老化モデルの樹立:神経老化in vitroモデルを作製するため、初代培養の長期培養を試み、1年以上培養することに成功した。この様な細胞は、Lipofscinなどの細胞老化マーカーの加齢に伴う増加が見られ、in vitro神経老化モデルの樹立に成功し、神経老化の分子機構を解明する新たなパラダイムとして提案した(Shiraishi-Yamaguchi and Mori,投稿中/改訂中)。 (2)老化脳におけるチューブリン脱アセチル化酵素HDAC6, SIRT2:マウスの加齢(10,59,121週齢)とともに大脳皮質や海馬においてHDAC6の発現増加と蓄積が見られた。当初、変性蛋白質の凝集体であるアグリゾームに対応するものと想定して実験を進めたが、現在までにストレス顆粒に対応するものと考える知見を得つつある(Shibazaki et al.,進行中)。 (3)N-Shcとスパイン形態:海馬初代培養神経細胞へのN-Shcの遺伝子導入により、スパインは退縮/消失し、N-Shcノックアウトマウスではスパイン密度の顕著な増加が見られた。その初代培養系へN-Shc遺伝子を導入するとその数が野生型のレベルに戻った。この様な現象は、Sck/ShcBでは見られずN-Shc特異的なものであり、可塑性制御においてN-Shcが重要な役割を担っていることが明らかになった。また、N-Shcと直接結合するRho-GAP/GritRICSがHomerとも共沈した。Grit系の関与はまだ不明だが、現時点でとりまとめている(Shiraishi-Yamaguchi et al.,投稿準備中)。
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