本研究は、研究代表者らが発見した新規軸索ガイダンス分子Lotus/CEP68の遺伝子欠損マウスを作製し、中枢神経系に発現している当該分子の生物学的機能を解析することを目的とする。平成19年度は以下の4項目について研究を進めた。1)Lotus/CEP68遺伝子欠損マウスの作製:理研CDBとの共同研究により目的分子の変異マウスを作製した。現在、横浜市立大学医学部実験動物センター内にて戻し交配を行って系統維持管理し、戻し交配終了後、ヘテロ個体同士の交配を行ってホモ個体を得て表現型の解析を開始する。2)Lotus/CEP68の発現解析:in situ hybridization法により、マウス胎生期脳(胎生15日)における当該分子mRNAの発現領域を解析した。嗅球僧帽細胞層内腹側、嗅索神経束内側、大脳皮質、視床、海馬、脊髄などの脳領域に強い発現が認められた。現在、他の胎生期における発現パターンおよびLotus受容体の発現領域について解析を進めている。3)Lotus受容体の結合部位の同定:Lotus遺伝子各ドメインの欠失変異体にアルカリフォスファターゼを融合させた変異蛋白質を作製し、Lotus受容体を発現させたCOS細胞上にて結合実験を行ったところ、C末端側のUドメインおよびCa結合ドメインに受容体との結合能が認められた。興味深いことに、これらの2領域だけの断片蛋白質は全長蛋白質に比して非常に強い結合能を示すことが判明した。4)Lotusの細胞機能解析:マウス胎生期脳の器官培養系でLotusをFALI法によって不活性化すると嗅索神経束が脱束化することから、Lotusの細胞接着能が予想された。そこで、LotusまたはLotus受容体を各々強制発現させたマウスL細胞を用いて細胞接着活性を解析したところ、LotusはLotus受容体との結合を介して細胞接着を増強することが判明した。
|