研究課題
本研究は、研究代表者らが発見した新規軸索ガイダンス分子Lotus/CEP68の遺伝子欠損マウスを作製し、中枢神経系に発現している当該分子の生物学的機能を解析することを目的とする。平成20年度は以下の4項目について研究を進めた。(1)Lotusの細胞機能:前年度にLotusとその受容体との分子間相互作用によって細胞接着が誘起されることが判明したことから、本年度はその細胞接着能を介する生理機能について検討した。培養基質として精製Lotusをコーティングした培養皿上に網膜神経節細胞(RGC細胞)を培養すると、顕著な突起伸長活性が認められた。コーティングしたLotusをFALI法によって不活性化すると突起伸長活性は全く見られなくなった。また、Lotus受容体はGPI結合型の膜蛋白質であるので、それを酵素処理によって膜から離脱させる処理を施すと同様に突起伸長活性が見られなくなった。これらのことから、LotusとLotus受容体の相互作用によって神経突起伸長が促進されると考えられた。(2)Lotus遺伝子欠損マウスの解析:理研CDBとの共同研究によりLotus遺伝子を欠損した変異マウスを作製した。横浜市立大学医学部実験動物センター内にて戻し交配を行って系統維持管理し、ヘテロ個体同士の交配を行ってホモ個体を得た。Lotusはマウス胎生12-14日に形成される嗅覚情報の2次投射路である嗅索の形成不全を引き起こす原因分子として同定されたことから、最初に遺伝子欠損マウスの胎生期における嗅索形成について検討した。予想に反し、胎生12-14日目の嗅索は同腹仔の野生型と変わることなく正常に形成されていた。しかし、遺伝子欠損マウスでは一旦形成された嗅索が胎生18日目では脱束化が起こり、神経東がばらばらになる異常が見られた。現在、例数を増やして検証を進めている。次に、Lotusはin situ hybridization法により、マウス胎生期脳(胎生15日目)では嗅球僧帽細胞層内腹側、嗅索神経束内側、大脳皮質、視床、海馬、脊髄などの脳領域に強い発現が認められたので、ニッスル染色などによって神経組織構築を検討した。現在のところ、顕著な組織構築異常は認められず、更に詳細な変化について精査している。
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