研究課題
基盤研究(B)
成人脳には側脳室下層および海馬に神経幹細胞が存在し、これらの神経幹細胞は神経細胞、星状グリア細胞、およびオリゴデンドログリア細胞に分化しうる。最近の研究で、側脳室下層の神経幹細胞は側脳室内に突起を出し、生物活性物資の作用を受け得ることが判明してきた。神経変性疾患であるパーキンソン病では、枯渇するドパミンを補う治療法はあるが、これは根本的治療法とはならない。パーキンソン病は黒質線条体路の変性により線条体内のドパミンが欠乏することにより発症する疾患であり、側脳室下層から線条体へは近距離であることから、ここに存在する神経幹細胞の増殖、遊走および分化が首尾よく行われれば、上記の種々の問題はすべて解決されることとなる。この度、Eph/ephrin系がこのような作用を発揮できないかどうかを調べるために、ラットおよびマーモセットでパーキンソン病モデル動物を作製し、ephrinを側脳室内に注入することによりその効果を調べた。ラットにおいては、神経幹細胞および前駆細胞の増殖、線条体内への遊走、ドパミン作動性神経細胞や星状細胞への分化、および血管新生の亢進が認められ、行動の改善も認められた。これらの組織学的および行動上の改善は治療開始後12週間の時点でも持続して認められた。マーモセットにおいては、脳室が小さく、正確に側脳室に注入することは困難であったが、側脳室近傍への注入により、Supermexにより測定した行動の明らかな改善が認められた。ephrin分子に関しては、Cartilage Oligomeric Matrix Protein (COMP)のcoiled-coil domainにephrin-A1分子を融合したものも使用したが、蛋白の沈殿を生じるくらいの多重合の状態となり、ephrin-A1-Fcをanti-IgG(Fc)で重合させたほうがより効果的な結果が得られた。
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