研究概要 |
シナプス伝達の可塑性を示す例として、ショウジョウバエの幼虫で、自発運動後、神経一筋シナプス伝達が著明に上昇することを見出し、この上昇は、シナプス小胞の運動神経末端での分布の変化の結果であることを報告した(Steinert, Kuromi et al. Neuron 2006, 50;723-733).当該年度では、この可塑性の生じる機構を解析し、以下のような重要な結果を得、現在(21年)論文を作成中である。1). シナプス小胞のリサイクル過程でのエンドサイトシスには二つあり、一つはactive zone(release site)で起こり(active zone endocytosis)、もう一つはnon-active zone (active-zoneの外側)で起こる(non-active zone endocytosis)。2). 運動神経の活動が弱い時にはactive zone endocytosisが主な機構であり、刺激が強くなるとnon-active zone endocytosisが関与するようになる。3). それぞれのendocytosisに関与するCa^<2+>チャネルは違っており、active zone endocytosisには、straightjacket遺伝子の発現するCa^<2+>チャネルが、non-active zone endocytosisは未同定であるが、La^<3+>-sensitive Ca^<2+>チャネルがその役割を果たしている。4). 神経の静止状態では、チュブリンの多重体は、軸策に存在するが、神経活度が高まると、神経末端にチュブリンの二量体が出現してくる。この時、エンドサイトシスされた小胞は、release siteの近くに分布する。しかし、このチュブリンの変化過程をタキソールで抑制すると、エンドサイトシス小胞は、リザーブプールに分布するようになる。以上のように、神経活動が高まると、リサイクル小胞のエンドサイトシス、分布が変化し、それには特別なCa^<2+>チャネルが関与すること、またチュブリンの変化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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