研究課題/領域番号 |
19300141
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 繁 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, チームリーダー (70281706)
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研究分担者 |
谷 利樹 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, 研究員 (60392031)
中釜 勇人 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, 研究員 (70332319)
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キーワード | 大脳皮質視覚野 / 方位マップ / 方位選択性 / モノアミン / 可塑性 / 感受性期 / 方位制限メガネ / 内因性信号光計測 |
研究概要 |
本研究提案では発達脳におけるシナプス可塑性ならびに固定化を誘導する内的動機付け・注意・覚醒・睡眠との行動学的相関に関する研究の基礎付けを行うとともに、弱視に対する薬理学的治療の可能性についても検討することを目的とする。昨年度は発達期のネコに、方位刺激の体験を制限する方位制限メガネを装着し、視覚野の方位マップが特定の方位に過剰表現するのを確認した後、成熟期にモノアミントランスポーター阻害剤であるメチルフェニデート(リタリン)を経口投与し、方位マップの正常パターンへの回復について調べた。本年度は、弱視に対する薬理学的治療の可能性について検討するため、発達期のネコに単眼への視覚入力を遮断するメガネ(視覚入力制限メガネ)を装着し、弱視モデル動物を作製し、視覚野の方位マップの回復に対する、薬理学的治療の効果を調べた。次に、視覚入力を遮断された眼に対する方位マップが消失した成ネコの正常眼への視覚入力を視覚入力制限メガネを用いて遮断しながら(弱視の治療で用いられる、正常眼への視覚入力を制限する方法)、ノルアドレナリン合成前駆体であるドプス、選択的セロトニン取り込み阻害剤であるマレイン酸フルボキサミン(ルボックス)、ドーパミン前駆体であるレボドーパ(ドパール)、アセチルコリン分解酵素阻害剤である塩酸ドナペジル(アリセプト)を、1ヶ月間、経口投与し、方位マップの正常パターンへの回復を内因性信号光計測法によって調べた。これまでのところ、上記の薬剤において、投与後の方位マップの明らかな回復は見られなかった。これらのことから、発達期の可塑性を亢進するとされているアミン系及びコリン系の神経修飾因子合成前駆体を単体で与えただけでは、臨界期後における弱視に対する劇的な治療効果は期待できないという結論を得た。
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