研究概要 |
当該研究の目的は、神経筋シナプスの形成および維持に関わる分子機構において、その中心的な役割を果たす受容体型チロシンキナーゼMuSKの活性化機構を解明するとともに、その破綻が招く難治疾患の病態解明、さらには、その治療法の開発である。 当該年度においては、MuSK活性化を担う細胞内因子Dok-7の分子内における機能モチーフを複数同定し、それらの解析を行った。興味深いことに、先天性筋無力症候群の患者で同定されたDOK7遺伝子に関する変異の多くが、Dok-7の機能モチーフを失活させるものであった(Hamuro, et. al. J. Biol. Chem. 2008;283:5518-24)。また、機能モチーフの一つであるSH2標的配列に関しては、それに相互作用するアダプター分子CrkIIを同定した(Hamuro, et. al. J. Biol. Chem. 2008;283:5518-24)。一方、MuSKと相互作用する分子についても、質量分析機器を利用することで新たに同定した(未発表)。このMuSK会合分子は未報告のものであり、今後、詳細な解析が必要である。 Dok-7およびMuSKと相互作用する分子の探索以外に、LRP4と呼ばれる膜タンパク質に関する研究にも着手した。LRP4は、その遺伝子改変マウスは神経筋シナプスを形成できないことから、MuSKの活性化あるいはその機能調節になんらかの貢献をしているものと考えられる。そこで、LRP4遺伝子の単離、動物細胞での発現ベクターの作成、抗体の作成を行った。さらには、LRP4と会合する分子群の探索も進めている。
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