研究課題
体積が大きい、小型淡水魚の未成熟卵子の凍結保存を成功させるためには、細胞膜の耐凍剤透過性を向上させることが必要である。その方法の一つとして、LHサージ前の早期のゼブラフィッシュ未成熟卵子(LHサージ前卵子)に水・耐凍剤チャンネルであるaquaporin-3(AQP3)のcRNAを注入して一定時間培養することによって、AQP3の細胞膜への蓄積量を増加させることが考えられる。本年度は、まず、LHサージ前卵子を受精率・孵化率に大きな影響を与えることなく正常に体外成熟させる方法の開発を試みた。ゼブラフィッシュLHサージ前卵子を従来から用いられている成熟培養法で体外成熟させた場合は、ほとんど受精・孵化しなかった。そこで、ウシ血清アルブミンを含むアルカリ性の新しい培養液を考案し、高率にLHサージ前卵子を受精・孵化させることができる体外成熟培養系を確立した。現在、この培養系を用いて、LHサージ前卵子の細胞膜により多くAQP3を蓄積させることができるかどうか検討中である。また、未成熟卵子の耐凍剤透過性を向上させるためには、水と耐凍剤の両方を透過するチャンネルよりも、耐凍剤のみを透過するチャンネルを発現させた方が効率がよいのではないかと考えられる。そこで、耐凍剤のみを透過する尿素輸送体の一種であるUT-A2のcRNAを合成して、細胞膜の水・耐凍剤透過性が高いメダカ未成熟卵子に注入して発現させた。その結果、耐凍剤透過性は無処理の未成熟卵子より向上したが、その程度は小さく、AQP3 cRNAを注入した卵子における向上より著しく低かった。現在、他のサブタイプの尿素輸送体が卵子の耐凍剤透過性の向上に有効かどうか検討している。
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