研究課題
体積が大きい、小型淡水魚の未成熟卵子の凍結保存を成功させるための方法の一つとして、より体積の小さい、未熟な卵子を用いる方法が考えられる。本年度は、まず、未熟で小型の未成熟卵子の体外成熟培養系の開発を試みた。雌ゼブラフィッシュから、Stage III終期卵子(0.65〜0.75mm)より小さい直径0.50〜0.60mmの卵子(Stage III中期卵子)を採取し、26℃の20%のウシ胎仔血清(FCS)および10IU/mLのeCGを添加した0.5%BSA添加90%LM液(pH9.0)(前培養液)中で6時間培養した。そして、26℃の1μg/mLの17α-20β-dihydrox-4-pregnen-3-on(DHP)を添加した0.5%BSA添加90%LM(pH9.0)(成熟培養液)で270分間成熟培養した。成熟率(86〜89%)と授精した後の受精率(59〜73%)は、前培養なしに直接DHP存在下で成熟培養した場合の成熟率(38%)と受精率(30%)に比べて大幅に向上した。また、一部の受精卵は培養後に孵化した(8〜13%)。したがって、Stage III終期卵子より小さいStage III中期卵子は、正常に体外成熟させることが可能であることがわかった。次に、水・耐凍剤チャンネルであるAQP3のcRNAをStage III中期卵子に注入して前培養液中で6-12時間培養して発現させ、膜透過性が向上するかどうかを調べた。その結果、Stage III中期卵子の水・耐凍剤透過性は、AQP3の発現により約2倍向上することがわかった。そこで、この卵子の成熟率、受精率、孵化率をしらべた結果、いずれもAQP3cRNAを注入しなかった卵子の値と比べて有意な差はみられなかった。AQP3を発現させたStage III中期卵子を用いた小型淡水魚卵子の凍結保存の成功が期待される。
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