研究課題/領域番号 |
19300150
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
平林 真澄 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (20353435)
|
研究分担者 |
篠原 隆司 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30322770)
|
キーワード | ラット / 円形精子細胞 / 精子 / 人為的活性化 / 第二減数分裂後期 / イオノマイシン / 体内受精 / DNAメチル化 |
研究概要 |
顕微授精による産仔作出効率の改善ラットにおいて円形精子細胞・精子め顕微授精(ROSI・ICSI)による産仔作出効率が低いのは、(1)ROSI時に卵子に施す人為的活性化のタイミング、(2)未成熟精子細胞核や成熟精子核のDNA脱メチル化が不適切なためと考え、この点を検証した。 (1)我々はこれまでに凍結保存したラット円形精子細胞の顕微授精による産仔作製を報告してきたが、精巣から調製したばかりの新鮮精子細胞を用いると産仔率は顕著に低かった。一般的なROSIプロトコールでは、活性化処理により第二減数分裂後期〜終期に進めた排卵卵子に円形精子細胞を顕微注入する。そこで、円形精子細胞(凍結vs新鮮)、活性化処理開始のタイミング(ROSI前vsROSI後)、そして活性化方法(DCパルスvsイオノマイシン)がラットROSIに及ぼす影響を調べた。DCパルスで活性化誘起した場合、凍結精子細胞を用いるときはROSI前に、新鮮精子細胞を用いるときはROSI後に、活性化処理を開始した方が高い産仔率が得られた(凍結区4.8vs3.3%、新鮮区0vs4.3%)。これと同じ傾向はイオノマイシンで活性化誘起した場合にも認められた(凍結区3.6vsl.2%、新鮮区2.7vs6.7%)。このことから、ラットROSI胚の産仔発生において新鮮精子細胞を用いる場合はROSI後に、凍結精子細胞の場合はROSI前に活性化することが望ましいと結論づけた。 (2)ラットにおける受精直後のDNAメチル化動態を調べるため、体内受精(in vivo区)およびICSI区によって作出した前核期卵に抗メチル化シトシンによる免疫染色を施し、相対蛍光度により解析した。IVF区ではhCG20時間から24時間目にかけて相対蛍光度が有意に下がり、この時期に精子由来ゲノムの顕著な脱メチル化が起きていた。一方、ICSI区では、6時間目と10時間目のサンプル間で有意差があったものの、in vivo区と比較して脱メチル化の度合いは小さかった。in vivo区でもICSI区と同様の推移が見られたことから、ラット卵子を体外環境に置いている過程で精子由来ゲノムの脱メチル化動態に影響が現れたものと示唆された。
|