研究概要 |
CAG/venusトランスジェニックラット胚盤胞に由来するES細胞株の樹立(平林) 遺伝子ターゲッティングによるゲノム改変ラット個体の作製は脳神経系遺伝子を含む数万にも及ぶ遺伝子の役割を研究するために切望されているが,従来からのマウスでの手法をラットに適用してもES細胞株を樹立することは困難だった。しかし最近,3種類のインヒビターセットを添加した培養液を用いることによりラットES細胞株が樹立できると報告された(Cell 135 ; 2008)。そこで平成21年度はCAG/venusトランスジェニック(Tg)ラット由来の胚盤胞からES細胞株を樹立することを試みた。CAG/venus-Tgラット由来の4.5日目胚盤胞9個から酸性タイロード処理により透明帯を除去し,FGFレセプターインヒビター,MEK活性化インヒビター,GSK3インヒビター,およびラットLIFを含むN2B27培地とともにマイトマイシン処理マウス繊維芽細胞上に播種した。7日後に増殖したICMを単離し,ガラスキャピラリーで数個の小塊にばらしてさらに7日間培養した。0.05%トリプシン処理を経て増殖コロニーを数回継代し,2ラインのアルカリフォスファターゼ陽性ES細胞株を樹立した。In vivoでの多分化能を調べるためF344/Jcl-rnu/rnuラットの皮下にES細胞2.5×10^5個を移植したところ,5週間後に肝・消化管(内胚葉),骨・軟骨・筋肉(中胚葉),神経組織・上皮(外胚葉)を含むテラトーマの形成が確認できた。Crlj:MIおよびCrlj:MIとDA/SlcのF1由来の4.5日目胞胚腔内に継代6~8代目のES細胞10個を顕微注入し,偽妊娠雌の子宮角に移植することによりキメラの作製を試みた。その結果,すべてのE15.5胎仔でvenus遺伝子の発現が確認でき(22/22;100%),出産産仔におけるキメラ率も極めて高く(9/11~17/17;82~100%)、さらに両ラインとも生殖系列寄与を確認することができた。
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