研究概要 |
これまで我々は心筋細胞培養系において, 心筋細胞内Ca^<2+>振動の細胞間同期に, 細胞外情報伝達系であるATP-purinoceptor系が関与している可能性を偶然発見した。細胞のエネルギー基質であるATPが情報伝達物質としても機能していることは, これまで主に中枢神経系や末梢神経系で明らかにされてきた。また心筋細胞においても, ATPが心筋細胞間でのCa^<2+>波の伝播に関与している可能性が明らかとなってきた。そこで本研究では, ラット・培養心筋細胞を実験対象とし, (1)蛍光・発光同時計測により, 細胞内Ca^<2+>振動にともなって細胞外ATP濃度が振動しているか? もし振動している場合には, 2つの振動間の相関ダイナミクスを明らかにする。(2)拍動に伴って細胞質内Mg^<2+>が振動しているか? (3)心筋細胞の拍動リズム, 細胞質内Ca^<2+>リズム, 細胞質内Mg^<2+>リズム, およびミトコンドリア内Ca^<2+>リズム間での相関ダイナミクスを明らかにする, 等の点を解明することから, 複数振動子(要素)間相互作用, およびそれら振動子間の協調と破綻のメカニズムの解明を目指した。本年度の研究成果は, 以下のようにまとめられる。 1. 心筋細胞の周期的な拍動に伴って, 細胞内Mg^<2+>濃度が変化している可能性を, 細胞内Mg^<2+>プローブであるMg-fluo4/AMもしくはKMG20を心筋細胞内に導入し, 細胞内Mg^<2+>濃度のダイナミクスを解析した。その結果, 細胞内M^<2+>濃度は心筋細胞の拍動とほぼ同一の周期で振動していることを世界に先駆けて明らかにすることができた(Kawahara, et.al, Chronobiol. Intern. 2008)。 2. 虚血時に心筋細胞内から細胞外にATPが放出されるが, maxi-anion channelから放出されるATPが, hemichannelからのATP放出を抑制している可能性を明らかにできた。
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