研究概要 |
細動脈血管壁での酸素消費率の定量化を行った。そのため,生体顕微鏡下で細動脈径と血管壁厚を記録しながら,血管内(血中)と血管外壁近傍組織での酸素分圧を求める方法を開発した。主にin vitro用計測法であった酸素感受性プローブ(Pd-porphyrin)のリン光寿命変化による光学的測定法を生体顕微鏡計測に応用し,微小循環での酸素分圧を非接触かつ局所的に測定できる時間分解型レーザー顕微鏡システムを開発した。開発顕微鏡により測定空間分解能10umで血管内と血管外壁近傍組織の酸素分圧を同時測定できることが確認された。つぎに,微小循環酸素拡散モデルの開発と力学特性の評価を試みた。組織への酸素拡散モデルとしてはKroghの組織円筒モデルが存在するが,このモデルは毛細血管からの酸素拡散を仮定したもので,血管壁の厚みや壁での酸素消費を含め,血管壁の機械的仕事量に関する情報は当然考慮されていない。このKroghモデルを基本に,本研究で対象とするラットcremaster筋の解剖学的および血行力学的特徴を加えた独自の酸素拡散モデルを開発した。この新しいモデルにより,微小循環酸素分圧の計測と血管壁酸素消費率の同定を行った。ラットのcremaster筋を対象に,上流側の小動脈から最下流の前毛細管細動脈までの種々のレベルの細動脈を対象に,血流,血管径,血管内圧の循環動態を記録しながら血管内(血中)と血管外壁近傍組織での酸素分圧を測定した。得られた血管壁での酸素分圧勾配の値と前述の酸素拡散モデルを基に,機能的状態にある細動脈の血管壁酸素消費率を求め,各部位での血管壁の仕事量とエネルギー消費の関係を明らかにした。さらに,平滑筋弛緩,収縮剤投与による最大血管拡張,収縮時において同様の計測を行い,この状態(平滑筋の最小,最大運動時)での酸素消費と血管壁応力を基準に,生理的状態での値と比較することにより細動脈血管壁の運動能力を血管壁の仕事量とエネルギー代謝から評価をおこなった。
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