細胞培養チャンバ直下にナノホールとマイクロバルブを2個×2個にアレイ化することにより、4個の独立した薬剤放出サイトを有するマイクロ流体デバイスを構築した。まず、シリコンの結晶異方性エッチングとプラズマエッチングを用いてSOI(Silicon on Insulator)基板を両面から微細加工し、支持基板層側に1個の培養チャンバを、活性層側に複数のマイクロ流路を構築した。次に、培養チャンバとマイクロ流路に挟まれた厚さ500nmのシリコン酸化膜に、集束イオンビームによるエッチングを利用して内径500nmのナノホールを多数開け、培養チャンバとマイクロ流路がこのナノホールのみで通じるようにした。そして、親水性のシリコン酸化膜と疎水性の自己組織化単分子膜をマイクロ流路の壁面上にパターニングすることにより、圧力を印加すると親水性と疎水性の表面張力の違いを利用して開閉するマイクロバルブを4個形成した。この4個のマイクロバルブを個別開閉するために、それぞれ個別の液体入力用ポートと1個の共通の空気入力用ポートに印加する外部圧力の制御方法を実験により導いた。さらに、マイクロバルブの開閉により蛍光色素ローダミンBをナノホールから培養チャンバ内に拡散放出し、その際の培養チャンバ内における蛍光強度変化を計測した。これにより、マイクロバルブを個別に時間差をおいて開閉した場合と同時開閉した場合の薬剤濃度分布の時間的及び空間的な変化を評価した。
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