第一に、底面に微小孔を有する細胞培養ウェルを8×8個のマトリックス状にアレイ化し、ウェル1列毎に別々のマイクロ流路をウェル直下に配置し、ウェル内に形成したニューロスフェア(神経幹細胞の球状凝集塊)に対して、流路に導入した薬剤を微小孔より作用させる細胞刺激デバイスを開発した。このデバイスにより、単一のデバイス内で8種類の薬剤に対する細胞応答を解析することが可能となった。特に、薬剤導入直後における各ウェル内の薬剤濃度変化を確認するために、蛍光色素FITC溶液を流路内に導入して流路1本分の8個のウェル内の蛍光強度を計測したところ、120分程度で各ウェル内の濃度がほぼ均一になることが分かった。実際の薬剤刺激は数日間に渡るため、薬剤濃度の均一化にこの程度の時間を要しても問題ないと思われる。また、ウェルアレイ上にマウス由来の神経幹細胞を播種し、約2日間培養したところ、各ウェル内に寸法が揃った直径180μm程度の単一のニューロスフェアが形成可能であることを確認した。 第二に、同様の細胞培養ウェル1個の直下にマイクロ流路を配置し、この流路に3層流から成るシースフローを形成し、この3層流の流量比を制御することで、微小孔からの薬剤放出を制御する細胞刺激デバイスを開発した。このデバイスにより、細胞への薬剤刺激のプロファイルを時間的かつ空間的に制御することが可能となった。このデバイスでは微小孔からの薬剤放出は薬剤分子の拡散のみで行われることが理想であり、そのためには微小孔内の流れを抑制する必要があったため、それに必要な流路出口の圧力条件を実験により導出した。また、カルシウムイオン・イメージング試薬で染色したニューロスフェアをウェル内に培養し、グルタミン酸で刺激した際に生じる細胞内カルシウムイオン濃度の増加を蛍光強度変化として観察した。
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