研究概要 |
本研究は,生体内に投与した各種蛍光ラベル剤からの蛍光分布を断層画像として計測することにより,生体生理機能やがんなどの病態を非侵襲診断する技術の開発を目的とする。そのための手段として,励起レーザー光と同時に集束超音波を生体に照射し,音響光学効果により発生した変調蛍光信号を高感度検出することで,光散乱媒質中での蛍光画像情報を得る,超音波タグ蛍光断層画像計測法の開発とその実用化研究を行った。目標とした仕様は深さ30mm程度の生体内に局在する蛍光物質の位置情報を数mm程度の空間分解能で検出することであり,ヒト診断に適用可能な装置化技術の開発をめざした。これまでの研究期間において,超音波焦点を電子的に走査するアレイ素子を用いた蛍光変調法や固定焦点型単一超音波発振素子を機械走査して画像化する方法の両面から検討を行ってきた。平成20年度にはアレイ素子の位相制御により形成した超音波焦点での蛍光変調,およびその画像化実験の結果から,その可能性と問題点をについて整理した。その結果を踏まえ平成21年度は,固定焦点形素子を機械走査する方法を採用し,これまで超音波媒質として水を用い,測定試料を水中に設置して行っていた計測方法に対し,専用プローブを直接被対象物に接触させて使用することのできるプローブ機構を考案しその試作検討を行った。実際に生体模擬試料による計測実験を行った結果,測定対象物がヒトのように大型であっても,そのサイズによらず接触させて使用することができることを確認し,生体内蛍光画像計測用音響光学プローブとして,診断装置に利用可能な性能を有すると判断された。目標としたセンチネルリンパ節蛍光断層画像計測装置として,ヒトに適用するための臨床試験を開始するには,今後動物実験等による更なる検討が必要であるが,今年度までの研究期間において,そのためのプロトタイプ機の開発に成功したといえる。
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