フルオラス基質への非特異的な吸着を抑えるため、また、糖鎖とタンパク質との相互作用の場を作るために、フルオロアルキル鎖と糖鎖の間にポリエチレングリコールオリゴマーのスペーサーを導入した糖鎖プライマーを合成した。アセチル化ラクトースのイミデート体と3-(パーフルオロオクチル)プロピルPEGPEGOH(或いは、3-(パーフルオロオクチル)プロピルPEGPEGPEGPEGPEGOH)を用い、三フッ化ホウ素エーテル錯体を触媒としてグリコシル化反応を行った。反応終了後、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製により得られたアセチル保護体を、ナトリウムメトキシドを用いて脱保護し、PEGのダイマーおよびペンタマーをスペーサーとするフルオラス糖鎖プライマーを得た。これらのフルオラス糖鎖プライマーをB16メラノーマ細胞やBHK-21(C-13)細胞の培地中に投与することによって、シアル酸が転移したフルオラス糖鎖化合物が得られた。得られたSiaα2→3Lac-O-PEG2-C3H6-C8F17を用い、レクチンやインフルエンザウイルスの相互作用評価をドットプロット法で行った。レクチンによる相互作用評価の実験方法を以下に示す。Siaα2→3Lac-O-PEG2-C3H6-C8F17(in MeOH/PBS=1/9、0.8mM)、LacO-PEG2-C3H6-C8F17(inMeOH、0.1mM)、PEG2-C3H6-C8F17(inMeOH、0.1mM)、の3種類の溶液をそれぞれ5mLずつ、ポリテトラフルオロエチレンフィルター(ダイキン製)上にのせ、乾燥した後、BSA(牛血清アルブミン)でブロッキングをし、(GM3を認識する)MAMレクチンと作用させ検出を行った。この時、Siaα2→3Lac-O-PEG2-C3H6-C8F17のみが選択的に認識した。一方、インフルエンザウイルスを用いる相互作用評価の実験では、Siaα2→3Lac-O-PEG2-C3H6-C8F17(inMeOH、0.20mM、0.05mM)、LacO-PEG2-C3H6-C8F17(inMeOH、0.20mM、0.05mM)の4種類の溶液を、レクチンの相互評価実験と同様、ポリテトラフルオロエチレンフィルター上に固定化、ブロッキングをし、インフルエンザウイルスA/duck/Pennsylvania/10218/84と作用させ、検出を行った。この時、Siaα2→3Lac-O-PEG2-C3H6-C8F17のみに選択的なウイルス吸着が検出された。
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