研究概要 |
前年度までに確立した方法に従いα-シクロデキストリン(α-CD)と平均分子量20,000のポリエチレングリコール(PEG)からなるマンノース導入ポリロタキサン(CD数:88/分子、マンノース数:0.5-3.3/α-CD)を合成し、蛍光ラベル化したモデルタンパク質(FITC-ConA)との溶液中における結合挙動を蛍光消光法により解析した。Scatchardプロットによると、ポリロタキサンに導入したマンノースの結合定数は、単独の場合より3桁増大したことが確かめられた。また、α-CDあたりのマンノース数が多いほど効果的に結合していることが明らかとなった(Ka=3.2×10^8,1.5×10^8,2.7×10^5M^<-1>、それぞれ3.3/α-CD,0.6/α-CD,マンノース単独に対する値)。これと併行して、細胞膜上における結合様式により近いモデルとして、ConAを基板上に固定化させる条件を検討した。今後、これらとの結合挙動をSPRにより追跡する。現在、ポリロタキサン中のα-CD数を制御する方法を検討しており、合成が完了次第、上記解析を行う。 上述のマンノース導入ポリロタキサンを架橋して得られるヒドロゲルは、細胞表面などの生体組織と直接接触した状態で"動く"結合部位を設計することが可能になる。そこで、ポリロタキサン中のα-CD同士、ポリロタキサンの末端部位同士を架橋する方法を検討した。現在はこれらの得られたヒドロゲルの力学特性を評価しており、リガンド導入ポリロタキサンの架橋条件についても検討を開始した。 一方で、ポリロタキサンの特徴である動くリガンドの多価相互作用発現における効果を検証する目的で、環状分子が"動かない"ポリロタキサンの設計・合成にも着手した。これは21年度引き続き検討する。
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