これまでの総括として、ポリロタキサンの刺激応答機能設計ならびにリガンド導入ポリロタキサンの生体応答を詳細に解析した。先ずルーズフィット型ポリロタキサンの刺激応答機能としては、これまで報告のなかったβ-シクロデキストリン(β-CD)誘導体とポリエチレングリコール(PEG)誘導体との組み合わせにおいて温度応答型包接形成を見いだし、その可逆性をβ-CDダイマーあるいはテトラマーを用いた際の系の粘弾性挙動変化に着目して解析した。次にリガンド導入ポリロタキサンについて、認識タンパク質であるコンカナバリンA(Con A)の固定化密度の異なる表面を調製し、それらに対するマンノース導入ポリロタキサンの結合をSPRにより速度論的に解析した。対照であるマンノース導入ポリアクリルアミドとの比較検討により、ConA固定化表面とマンノース導入ポリロタキサンの多価相互作用の亢進には、結合速度定数の著しい増加が強く貢献していることがわかり、ポリロタキサン骨格に沿ったリガンド運動性の効果が証明された。また、蛍光分子導入ConAを用いたマンノース導入ポリロタキサンとの結合におけるFRET解析により、隣接CDの接近によるマンノースとの多価結合が実証され、リガンドの運動性を確保できるポリロタキサンの有効性が示された。最後に、マンノース導入ポリロタキサンの細胞応答を、マンノースレセプターを有するマクロファージ様細胞への取込ならびにサイトカイン産生に着目して解析した。ポリアクリルアミドに導入したマンノースはマクロファージから炎症性サイトカイン産生を誘発していたのに対し、マンノース導入ポリロタキサンを貪食したマクロファージは抗炎症性サイトカインを産生することがわかり、動的超分子を用いた特異的相互作用において抗炎症性亢進が可能であることが示された。
|