金ナノロッドは近赤外域に強い吸収をもち、吸収された光は効率よく熱エネルギーに変換される。また、近赤外光は組織への透過性が高く、したがって、金ナノロッドを病変部位に集積させることができれば、病巣の近赤外光イメージングに加え、フォトサーマル治療が可能になる。本年度は、マウスに移植した腫瘍を対象にしたフォトサーマル治療および金ナノロッドの腫瘍への標的化についての基礎検討をおこなった。 ポリエチレングリコール(PEG)修飾金ナノロッドは高い血中安定性を示すことをこれまでの研究で明らかにしている。そこで、このPEG修飾金ナノロッドをマウスに移植した腫瘍に直接投与し、近赤外レーザー光を照射した。その結果、腫瘍の成長がコントロールのマウス(金ナノロッドの投与のみ、レーザー照射のみ、あるいは、無処置)にくらべ、有意に抑制されることがわかった。さらに、腫瘍を摘出し、組織切片を観察してみると、明らかな腫瘍細胞の傷害が観察され、これは金ナノロッドのフォトサーマル効果によるものであると考えられた。金ナノロッドを静脈投与し、近赤外レーザー光を照射した場合においては、その増殖抑制は弱かったが、有意な効果は認められた。静脈投与の場合では金ナノロッドの腫瘍への移行効率が悪いことが考えられる。 腫瘍に効率よく金ナノロッドを認識させるために、腫瘍組織内に高発現しているインテグリンに注目し、それに結合する環状ペプチド(RGDペプチド)で金ナノロッドを修飾した。その結果、インテグリンを高発現している培養細胞に対して、金ナノロッドの選択的な結合が認められ、腫瘍への標的化が可能であることが示された。 この他、近赤外光を使ったバイオイメージングについても検討を行った。金ナノロッドを静脈より投与し、その腹部の金ナノロッドの存在量について、積分球を使ってリアルタイムにモニタリングする方法を開発した。
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