研究概要 |
本研究目的は「抗がん剤などを必要な量を必要な時期に必要な場所に送達する」新規の薬物送達システムと,我々が開発した二酸化チタン・超音波触媒法と組合わせた診断と治療が可能ながん治療システムを開発することにある。本年度は目的抗がん剤の運搬担体として,超音波刺激に応答する感温性高分子を融合したナノサイズ(100〜200nm)のリポソームを調整した。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性エステル化した,ポリエチレングリコール(PEG)結合リン脂質(NHS-PEG-DSPE)をリポソームと融合した。これより,タンパク質などのアミノ基と容易にアミド結合を形成させ,リポソーム表面へのタンパク質修飾が可能になる。これより酵母遺伝子組換え生産系を用いて作製したB型肝炎ウィルスの肝細胞認識タンパク質(preS1/S2)を固定した。Pre-S1領域にはヒト肝細胞と直接結合する領域を含んでいることから,肝細胞を特異的に認識できるナノサイズのリポソームの構築に成功した。温度感受性ポリマーとして2C_<12>-poly(NIPMAM-co-NIPAM)を合成し,これをリポソームと融合した。感温性高分子は,温度変化によって親水/疎水性を変化させる高分子であるが,がん組織局所に焦点を合わせた超音波刺激は高分子の相転移温度を変化させ,リポソーム膜を特異的に破壊し,抗がん剤,二酸化チタンナノ粒子を放出する。これによって目的の抗がん剤を選択的にがん局所へ投与し治療効果を高めるとともに,正常組織への集積を抑制し,副作用の軽減を図ることができる。またマイクロバブルである超音波造影剤は肝臓および循環器領域での超音波診断に画期的な進歩をもたらしていることから,がん病変部位と特異的に結合するコントラストエコーガス封入リポソームを調整し,診断と治療を同時に行う次世代型システムへと進化させる。
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