研究概要 |
H19年度は,超高感度・超高速カメラを用いることで空気噴流を与えた際の角膜の動的挙動の可視化を行った.これにより,涙波の存在,力に対する変位の遅れ現象,さらに変形終了時における角膜表面の1[kHz]オーダの振動の可視化に成功した. 実験では被験者への照明の影響を極力抑えるため,超高感度・超高速カメラを導入し,角膜に空気噴流を与える非接触眼圧計としてノンコンタクトタイプトノメータを使用した.カメラを眼軸に対して斜め前方方向に設置し,空気噴流印加時における挙動をフレームレート5000[fps]で約14[ms]間撮影した.また,赤外線による全体照明とは別に,赤外線照明を左斜め前方方向から当て,ディヒューザの役割としてトレーシングペーパーを利用することで角膜表面の挙動を鮮明に撮影することに成功した.本研究で得られたような鮮明な眼角膜のダイナミック挙動撮影は過去に例がないものである.この映像を解析し,二つのきわめて興味深い結果を得ることができた.1点目は,空気噴流が下まぶたに到達しているにも関わらず角膜表面には全く変形があらわれていないことである.これは,力に対して変形が遅れるというこれまでの実験結果を視覚的に立証したことになる.2点目は,空気噴流の壁面せん断応力によって作り出された涙波を撮影することができた点である.涙波についてはこれまで報告がなく,今回の可視化実験での一つの大きな成果と言える.
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