研究課題
このプロジェクトは癌細胞特異的マーカーとナノ粒子を用いた早期癌診断ツールを開発することを目的としている。HSP70ストレスシャペロンであるモータリンが多くの不死化や腫瘍細胞において発現上昇していることは、タンパク質レベルのスクリーニングにより明らかになっている。本研究で、モータリンが癌細胞の細胞表面で高発現していることを明らかにした。この結果に基づき、抗モータリン抗体が癌細胞に特異的に内在化するか検証し、特定の抗体が癌細胞へ内在化する特性を有していることを明らかにした。内在化する抗体にFITC、もしくは蛍光ナノ粒子(量子ドット)を結合させることで、in vitroにおけるリアルタイムイメージングが可能となり、またこの蛍光付加抗体を細胞内へ内在化させることで、蛍光観察による追跡が可能な細胞を作製することができた。内在化する抗体に結合させた量子ドットは細胞毒性がなく、細胞の構造や機能的性質に大きな変化は見られなかった。次に量子ドット付加抗体の内在化効率、感受性、検出限界を検討したところ、作製した量子ドット付加抗体は癌細胞に非常に早く取り込まれ、複数回の細胞分裂を経ても検出可能であった。さらにこの抗体にDsRed発現プラスミドを付加したところ、癌細胞でのみDsRedを発現した。また、モータリン過剰発現細胞を使った実験から、抗体の内在化はモータリンの発現レベルに依存することが明らかになった。このことから、抗モータリン抗体は癌細胞特異的なキャリアや診断ツールとして応用可能であると考えられる。この結果は国内および海外の学会において高く評価され、すでに3報の論文が発表されている。現在はin vivoにおける細胞内在化量子ドットを利用した湿潤性癌細胞の検出法と、抗体と同等の機能を有し癌診断ツールとして応用可能な機能性ペプチドの開発を行なっている。
すべて 2007
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