脳卒中発症後6か月以上経過した片麻痺患者を対象に、非麻痺側下肢に模擬義足を適用した歩行訓練の有効性を多施設共同(慶慮義塾大学病院・東京湾岸リハビリテーション病院・淵野辺総合病院)での無作為対照試験を実施した。取り込み基準は、下肢近位運動機能がSIASにて2~4、下肢感覚機能が2以上で、補装具を使用せずに10m以上歩行できる患者とした。介入は、最大5分間の歩行訓練を3回/日で週3日以上、計10日間とし、対照群には後方・側方歩行、階段昇降、トレッドミル歩行などの麻痺側下肢を使用して歩行する訓練を理学療法士の判断で実施した。結果の指標は、介入前、介入後2-5日後における最適歩行時の制動期および駆動期の前後方向分力の体重当たりの平均値(%GRFf-a)、立脚期時間、歩幅、ケイデンスに加えて、立脚期の内側広筋と大腿二頭筋、前脛骨筋とひらめ筋の同時収縮時間率、最大歩行速度を用いた。介入を終了した16例の前後の評価では、義足群で、麻痺側下肢での駆動力%GRFf-a値が2.74±1.12から3.57±0.99に改善し(P<0.005)、ケイデンスが96.0±9.1から101.2±12.4、最大歩行速度が1.12±0.17から1.21±0.11m/secに改善した(P<0.05)。同時に、片麻痺歩行の特徴である非麻痺側下肢での大腿筋群での同時収縮に基づく立脚期制御は、68.9±20.9から43.6±19.9%に低下した。一方、通常の歩行訓練群では、最大歩行速度は改善する傾向が見られたが、立脚期の同時収縮がむしろ延長する場合があり、その他の歩行指標に有意な変化は同定されなかった。以上から、義足歩行訓練は、短期間の介入によって、片麻痺歩行における歩行様式を変容させる効果があることが示された。介入を継続するとともに、本結果を英文で投稿中である。 また、模擬義足のソケット部品の粘弾性を改良し、大腿および下腿部周径の変化に対応できるように工夫した。その結果、すべての患者にオーダーメイドで義足を作製する必要がなくなり、本訓練の普及に向けた準備が整備された。
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