研究概要 |
自発運動直後に誘発される運動誘発脳磁場および運動開始前に観察される運動準備磁場の電流発生源とその発生メカニズムを明確にすることを目的として本研究を実施している.はじめに,運動後の成分である運動誘発脳磁界第一および第二成分を検討した.1)自発運動遂行の運動範囲を小さく制限した課題遂行時に運動誘発脳磁界第二成分が大きくなることが明らかとなった.運動後120msec前後で観察される運動誘発脳磁界第二成分は不安定な波形であるが,この成分を検討する場合,運動範囲を小さくした課題を設定する必要性があることが示唆された.2)皮膚表在刺激時における体性感覚誘発脳磁界を計測し,皮膚刺激後約50msecで大きな誘発磁界反応が観察されることが明らかとなった.3)ワイヤー電極を示指伸展筋に刺入し,電気刺激を用いて示指伸筋のみを単独収縮させた際の体性感覚誘発脳磁界を計測した.その結果,示指伸筋単独収縮時の体性誘発脳磁界は自発運動直後の運動誘発脳磁界第一成分と同様の反応であることが明らかとなった.この結果から,運動直後に観察される運動誘発脳磁界第一成分は皮膚や関節の受容器ではなく,筋紡錘の活動を反映していることが確認された. 次に,運動開始前に観察される運動準備磁場の電流発生源の検討を開始している.まず,自発運動をセルフスピードで行う課題と,数種類の視覚刺激を合図とした運動を組み合わせて,運動準備磁場の成分を分析している.具体的には,運動の方向を認識させる視覚刺激課題や,異なる色や形を認識して運動遂行の有無を判断させる視覚刺激課題など複数の視覚刺激を作成して予備的実験を開始している.
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