血管内皮機能に関連する因子として、酸化ストレスと抗酸化力の両指標のレベルを評価するシステムを導入し、その基礎的な検討を行った。健常者と実験動物(イヌ)の血中濃度を計測したところ、健常者は両指標ともに正常レベルにあったが、イヌの酸化ストレスレベルはヒトの数分の1のレベルにあり、それに対して抗酸化力レベルはヒトと同レベルかそれを上回るレベルにあったことから、高い抗酸化力による酸化ストレスレベルの抑制メカニズムを備えていると推測された。今後、生活習慣病に関連して、人間ドックの患者などを対象に両指標の計測を実施し、NOレベルとの関連を検討し、血管リハビリテーションを実施した場合のこれらの指標の変動を評価し、リハビリテーション効果の定量的評価方法の確立を目指す。 さらに本研究で開発したNOセンサーの応用を試みた。血管内皮機能障害が関連した対象として腹膜透析(CAPD)患者に注目し、使用済み透析液中のNO濃度を計測した。CAPDにおいて、NOは腹膜機能調節と維持に寄与しているとも推測されており、こうした面からもNO計測は重要である。結果は、使用済透析液中に計測可能なレベルでNOが存在し、さらに患者によってNO濃度が大きく異なっていることが明らかとなった。他の腹膜機能指標との関連はまだ評価できていないが、腹膜機能の指標としての可能性が示唆された。また、NO合成酵素の活性維持に必須である補酵素のテトラヒドロビオプテリン(BH4)の濃度をHPLC法で計測したところ、NO濃度との間に有意な正の相関が認められた。BH4は酸化ストレスの増加により、酸化され生理活性を失うため、BH4のbioavailabilityの変動がNO濃度の差異に関与し、腹膜の機能の変動にも影響しているのではないかと推測された。
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