研究概要 |
本提案は義手,義足などの機能補助機器とその使用者身体間の動的協調の実現を目指すものである。そのために,機器のコントローラと使用者の運動制御のダイナミカルカップリングを可能にするインタフェースが必要となる。本提案は,筋電義手とその使用者の動的協調の実現を具体例として用い,そのインターフェースの構築を試みる。H19年度中,そのインターフェースを実現するために,使用者運動意図の識別方法及び使用者への感覚提示法の確立を目的として,上肢運動特性の計,解析及び,ボディ運動イメージの可塑性について,以下の項目で,研究を行なった。 ◆計画通りに構築した上肢計測システムを用いて,上肢運動計測実験を行なった。指動作関連のデータをセンサーチャンネル間の相関解析を行い,その結果皮膚表面の振動パターンから,人差指,中指,薬指の動作が分類可能とであることを明らかにした。この方法を筋電信号のみでは識別困難な指動作の識別に応用できれば,使用者運動意図の識別に大きく貢献することになる。また,上肢動作における指,腕,肩間の関連性分析に統計的因果推論の適用を試みた。統計的因果推論が全身動作における各身体部位の運動-感覚協調関係の特定に適していることが確認した。 ◆電気刺激パターンによる指角度感覚代行の学習過程に対する音声情報の影響を調べた。結果,音声情報が電気刺激パターンと指角度の関連付けを促進する効果は明らかにした。よって,従来バイオフィードバックに必要とされている視覚情報の代わりに,音声を用いる可能性を示し,視覚処理に由来する使用者の認知負担を軽減することが期待できる。 ◆さらに,感覚フィードバックにおける自己運動(self-action)の影響について調べた。自己動作が感覚フィードバックに識別バイアスに与えることを確認し,バイオフィードバックを行なう場合,運動-感覚協調を考慮する必要があることを明らかにした。
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