研究概要 |
触知記号に関しては,触知案内図に用いられる基本形状や面パターンの識別容易性を実験により明らかにした.被験者群としては,晴眼者と視覚障害者による違いに加えて,加齢の影響を明らかにするために若年者のみならず高齢者の協力も得て実験を行った.面を表すストライプパターンについては,線間隔の違いによる識別特性を求めた結果,晴眼者の場合には加齢とともに識別特性が低下することが確認できた.一方,視覚に障害がある場合には,高齢者と若年者との間には顕著な違いが認められず,高齢者でも識別能力が衰えにくい傾向が明らかになった. また小型機器に付ける触知記号の有効性を評価するために,携帯電話の5のボタンに付ける凸ドット記号のサイズの検討を行った.実際の携帯電話のモックアップモデルを用いて,5のボタンに付けた凸ドット記号の高さが異なる場合の操作性を操作時間とエラー率を指標に評価した.高齢者群のデータを若年者群のデータと比較すると,操作時間については長く,またエラー率については高いという結果が得られた.しかし凸ドット記号の高さの違いによる識別性の違いを比較すると,高齢者群,若年者群の何れにおいても高さが0.3[mm]の場合に操作時間が有意に最短になり,エラー率も有意に最小になり,最も操作性が高いことがわかり,低すぎても高すぎても逆に操作性が低下する事が確認できた. 振動の弁別特性に関しては実験装置を開発して振動知覚の閾値を計測した.その際に,振動子に触れるだけ(0.2[N]以下)の状態と,ある程度押しつけた(約4[N])状態とを比較した.実験の結果,特に振動知覚の閾値が小さいとされる高周波(250[Hz])振動刺激をかけた場合には,後者が小さくなった.現在,指先の指腹部に分布する振動刺激受容器や指腹部自体の粘弾性特性の加齢による変化を明らかにするために,高齢者を被験者とした実験を検討している.
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