研究概要 |
成果I:運動準備期における大脳皮質運動野周辺領域の脳活性と心拍応答との対応関係について検討した.大脳皮質の脳活性は近赤外分光法により計測した酸素化ヘモグロビン濃度を用いた.筋収縮を伴わない運動準備期においてシグナル音を心中で数える対照群に比較して同じ準備期の後に掌握運動を行うことを指示された運動群では大脳皮質運動野周辺領域の脳活性と心拍応答が共に上昇するという対応関係が示された.このことから運動予期に伴うセントラルコマンドが皮質運動野周辺領域の脳活性と心拍数をともに上昇させると考えられた. 成果II:意志によって行う能動運動(セントラルコマンドが有る条件)と他動的に動く受動的運動(セントラルコマンドの無い条件)における運動開始時の脳血流動態を比較し,セントラルコマンドがどのように脳血流量を制御するのかを検討した.被験者は頭部を楽に固定できる姿勢で椅子に座り,肘関節伸展屈曲運動ができるエルゴメーターを用いて能動運動あるいは受動運動を2分間行った.中大脳動脈血流速度,椎骨動脈血流量を超音波法を用いて計測した.能動運動では,運動開始前から椎骨動脈血流量および心拍数に有意な上昇が示された.また開始オンセット時には頸動脈血流量および中大脳動脈血流速度も有意に上昇した.一方このような脳血流増加は受動運動では示されなかった.これらの結果から,運動開始時の予期応答に働くセントラルコマンドは脳血流調節にも働くことが示唆された.特に,大脳皮質後頭葉の一部,脳幹,小脳といった部位へ連絡する椎骨動脈血流量では頸動脈経路に比較して予測制御として働くセントラルコマンドの影響が大きいことが示された.
|