経頭蓋磁気刺激(TMS)-脳波測定システムを構築し、ヒト大脳皮質自発活動の位相同期ネットワークの機能的意義についての操作的な解明を行った。健常成人被験者10名において開眼、閉眼時に左半球運動野に95%運動閾値強度でTMSを加えながら脳波を測定した。TMSによる脳波アーチファクトの軽減に成功した。脳波の時間周波数解析を行い、特に2-5Hz帯域においてTMSによる自発活動の位相リセッティング、振幅の上昇が確認された。また刺激した運動野から全頭の広い領域上の脳波電極に渡って位相リセッティングと振幅の上昇の伝搬が観察された。開眼時には閉眼時に比べてより後頭部の電極まで含んだ広く強い伝搬パターンがみられ、より大域的で視覚関連の領野まで含んだ機能的な位相同期ネットワーク結合の存在が示された。TMSは位相同期ネットワークに干渉可能であり、TMS-脳波測定は脳活動ダイナミクスと脳機能との関係を解明する操作的手法として有効であることが明らかになった。
|