本研究は、スポーツを教材とする体育でなければ成しえない人間形成の意義を確認するために、児童・生徒の「心と体」の問題が彼(彼女)らの人間的な存在への問いと不可分であるという認識に立って、スポーツにおける人間の生の経験とスポーツを教材とする体育における人間形成の可能性を検討するものである。具体的には、スポーツにおける「他者との交流」や「コミュニケーション」から得られる人間の多様な生の経験を体育という人間形成の営みに取り込むことで、児童や・生徒が直面する「心と体の問題」の解決に向けてわれわれも貢献できるのだという観点から「スポーツと人間の生の経験」「スポーツの教育的価値」「体育における人間形成」について考察する。本研究は五つの研究課題を設定して三年の期間にわたって行うものであるが、その一年目の平成19年度は、体育において「心と体を一体として捉える」こと、「自分や仲間の体や心の状態に気付く」ということについて哲学的考察を進めた。具体的には、1「心身を一体として捉える」とはどういうことか、2「体や心への気付き」とは何かということについて、主として文献のレビューを中心に研究を進めた。また「心と体」の問題が自己自身の存在への問いと不可分であるという認識に立ち、スポーツが人間の生の経験に対してどのような意味を持つのかという原理的な問題についても、海外共同研究者と協力しながら研究を進め、成果の一部を国際スポーツ哲学会第35回大会において発表した。
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