研究概要 |
身体運動をキネティクス観点から詳細に分析するためには,関節トルクを筋張力のモーメントに分配する問題(分配問題)を解く必要がある.しかし,分配問題を解く際の目的関数すなわち身体運動の動作規範には,共通のものが存在するわけではない.そこで本研究では,身体運動,特に移動運動を中心として運動中の筋張力を推定する方法を確立し,動作規範について検討することを目的とした. 平成19年度は,動作データから筋力を推定する計算プログラムを構築し,ある程度は筋放電と一致することを確認した(学術論文および研究発表).そして,ゆっくりした歩行動作(1m/秒)から疾走動作(7m/秒)までの6通りの歩・走動作を対象として,分配問題の目的関数がどのように変化するのかを検討することを目的として動作計測実験を行った.被験者は大学陸上競技選手24名であった.歩よび走動作を3次元自動動作分析装置で計測すると同時に,プリアンプタイプの電極を用いて下肢の8筋(前脛骨筋,腓腹筋外側頭,大腿直筋,外側広筋,下肢二頭筋長頭,長内転筋,中殿筋,大殿筋)の筋放電を測定した.また被験者の下肢の筋力特性を評価するために,筋力測定器(BIODEX)を用いて,膝関節および股関節の等速性屈曲/伸展最大筋力を測定した(両関節とも3種類の速度).本実績報告作成時点では,3次元自動動作分析装置から得られた身体分析点のラベリング中である.そして上述したように,最適化による筋力推定プログラム(基幹システム)は構築済みであり,ラベリング終了次第,様々な目的関数による最適化計算を実施する準備は完了した.
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