研究概要 |
身体運動をキネティクス観点から詳細に分析するためには,関節トルクを筋張力のモーメントに分配する問題(分配問題)を解く必要がある.しかし,分配問題を解く際の目的関数すなわち身体運動の動作規範(目的関数)には,共通のものが存在するわけではない.そこで本研究では,身体運動,特に移動運動を中心として運動中の筋張力を推定する方法を確立し,動作規範について検討することを目的とした. 平成20年度は,平成19年度に構築した筋力推定のための基幹プログラムを活用し,様々な運動規範(目的関数)に基づいて歩行および走動作中の筋力推定を行った.その結果,従来は筋活性度の3乗和を最小にすることを動作規範として筋力推定を行うことが最適であるとされてきたが,歩速度/走速度によってはの活性度の3乗和が必ずしも最適な動作規範ではないことが示唆された.すなわち,これまでの研究で用いられてきたような単一の動作規範で筋力推定することには問題があることを明らかとなった.このことは,本研究の「動作規範について検討すること」という目的の一つを達成できたことになる. さらに,28名の被験者を対象に,異なる努力度で垂直跳および立ち幅跳を行った際の下肢主要筋の筋放電,動作精報,地面反力情報を同時計測する実験を行った(筑波大学人間総合科学研究科倫理委員会承認済).現在は最適化計算中であるが,1試技1条件の筋力推定・最適化のために約10時間を要するため,複数の試技・条件で最適化を行う必要がある本研究では,使用するコンピュータの計算能力を向上させる必要があろう. なお,歩動作および走動作における動作規範に関する研究は,2009年7月に開催される国際バイオメカニクス学会(南アフリカ・ケープタウン大学)での研究発表が受理されている.
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