研究概要 |
姿勢変化時には、心肺圧受容器や動脈圧受容器反射が共に働くことから、それらの相互作用が循環調節に大きな影響を及ぼすと考えられる。また、血圧や血管抵抗は自発性の変動をしていることが知られており,これらを解析することによって,血圧の変動に対してどのように循環調節が行なわれているかを評価できると考えられる.近年,このような自発性変動に着目する手法を用いた報告において,起立姿勢時の全身の末梢動脈血管においては,循環調節として血管の自己調節が主な役割をはたす可能性が示唆された.姿勢変化時には,末梢動脈、特に下肢において,心臓との静水圧差が変化するため,これによる経壁圧の変化によって循環調節の状況が変化する可能性があるが,姿勢変化時に上肢や下肢といった末梢動脈について自発性変動に着目して循環調節を検討した報告は見あたらない.そこで本研究では,まず、交感神経、種々の部位での血管反応(上肢、下肢、大動脈、頸動脈、脳血流)、血圧、心拍数、筋酸素化動態などを連続的に同時測定できるシステムの構築と、それらのデータを用いて自己回帰分析する方法を確立し、それらを利用して姿勢変化時の上肢および下肢の循環調節について,自発性変動に着目して検討した.その結果,姿勢変化時の自発性の血圧変動に対する血管抵抗の変動は,上肢および下肢の動脈血管においても,血管の自己調節と同じパターンの変動をしていることが示された.頭上げ姿勢により下肢血管に静水圧が加わった場合には,血管の自己調節の反応時間が短縮する可能性が示唆された.また,頭下げ姿勢時により下肢血管に対する静水圧が減少した場合には,血管自己調節の働きが弱まる可能性が示唆された.
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