研究概要 |
50人の健康な成人の被験者に対して,筋代謝受容器を刺激するために、1分間の静的ハンドグリップ運動を行い、運動終了直前5秒前から4分間の前腕止血を続けて行った。この4分間の止血期間(PEMI)は、運動によって生じた代謝産物を運動後も筋に保持しているため筋代謝受容器を選択的に刺激する期間と考えられる。止血期間における、動脈血圧(SAP)変化、呼吸反応、心電図RR間隔(RRI)変化等を測定し、それらの変化の相互関係を検討した。特に、心拍数、動脈血圧の変動をそれぞれ周波数解析するとともに、血圧反応や心拍反応に対する遅れ時間や反応の生ずる確率などをそれぞれ解析し、筋代謝受容器反射と動脈圧受容器反射との連関を検討した. その結果、PEMIによるRRIの変化量とSDR-R,高周波(HF)パワーの変化量との問に有意な正の相関関係がみられたが,RRIの変化量と低周波(LF)パワー,LF/HFの変化量との間に有意な相関関係はみられなかった。SDR-R,およびRRI変動のHFパワーは心臓副交感神経活動の指標であり,RRI変動のLFパワーには心臓交感・副交感神経活動の両方が関与し,LF/HFは心臓交感神経活動の程度を反映すると考えられている.これらのことから,筋代謝受容器刺激時におけるHR反応の個人差には,主に心臓副交感神経の応答が関係することが示唆される.また,PEMIによるRRIの変化量とLF-Gainの変化量との間に有意な正の相関関係がみられた.SAP-RRIのLF-Gainは動脈圧受容器反射のHR調節の感受性(BRS)の指標とされている.したがって,筋代謝受容器刺激時におけるHR反応の個人差には,BRSも関与していると考えられる.
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