研究概要 |
20世紀の「人間の運動軽減をめざした社会構築」の弊害として,身体能力,身体感覚,身体意識が劣化し,結果として生活習慣病やメタボリック,シンドロームなどが現れた。特に高齢化社会が問題となっているが,人間のQOLという観点からは,自力で移動できるということが最低限保障されていなければならない。それは,脳の高次機能を中心とした呼吸循環系能力と筋,骨格系能力の維持と活性化であるが,これらの機能は,通常の社会生活を過ごすだけでは維持できない社会となっているのである。 機能不全や器官疾患の対処には,医学系処置が必要であるが,そこに至る前の不定愁訴段階において,正常あるいは活発状態にもどすことは難しくない。これについて,生体情報収集技術とトータルネットワークシステムによって,健康維持を行うことを,本研究は目的としている。 本年度は,統合システムを構成する個々の生体情報の自動取得システムの構築をめざした。日常生活から歩行,ジョギング,ワークアウトまで,低強度の運動から高強度の運動までのエネルギー消費量を推定するシステムを構築する。一次データとして取得する変数は,心拍数,身体加速度,筋電図である。これらの変数のエネルギー消費量への相互貢献度を測定して明らかにし,システムに組み込む。身体加速度の変動を用いた運動強度推定は,歩行やジョギングなどは適切であるが,身体加速度がほとんど生じない自転車ペダリングなどには適さない。その際に心拍数を考慮すると推定精度が大きく上昇する。また,上肢,下肢といった局部の運動に関しては筋放電量を加えることで,さらにエネルギー消費量推定精度が上がる。エネルギー消費量を目的変数とし,各独立変数をニューラルネットワークを用いることで,様々な運動において,エネルギー消費量を能率よく推定できた。
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