本年度は、これまでに開発した機器を用い、目黒区の中のある遊歩道周回コースの運動について、心肺機能の向上や筋力強化という観点から運動生理学的測定を行い、その効果を評価した。対象者は、高齢者2名、中高齢者2名、若年者5名の計9名(含、女性3名)であった。約2.2kmの遊歩道(含、昇降局面)を、1:普通にあるく「常歩」、2:速足で歩く「速歩」、3:駆け足「JOG」の3種類のスピードで、3周回った。所要時間は、それぞれ常歩:33分、速歩:25分、JOG:16分であった。測定項目は運動中の心拍数、筋電計により下肢5筋(大腿直筋、大腿二頭筋、ヒフク筋、ヒラメ筋、前頚骨筋)の筋電図、GPSによる移動スピードであった。 心拍数の経過パターンとして、常歩・速歩・JOGともに、平地では一定の心拍数、昇り局面で心拍数の上昇、降り局面の一部(急激な昇り局面)で若干上昇するというパターンを示した。運動強度として、常歩は平地60%HRmax以下なので、効果的な有酸素運動には至らず、昇り坂でようやく適度な強度になる。速歩では、60~80%HRmaxと適切な運動強度の範囲になっている。JOGでは70~90%HRmaxとかなり高い強度となる。このように、心拍数で簡便に運動強度を評価できた。筋電図については、すべての筋において、常歩・速歩・JOGの順に筋放電が増加する。常歩では、大腿直筋・大腿二頭筋・前頚骨筋が20%MVC程度、ヒフク筋とヒラメ筋が40~50%MVC程度の筋活動である。速歩になると、それぞれの筋が、10%MVC程度増加する。さらに、JOGになると大腿二頭筋の貢献が大きくなり、各筋にて常歩のほぼ2倍の筋放電量が認められた。すなわち、常歩と速歩では、ふくらはぎのヒフク筋とヒラメ筋の活動が顕著で、JOGになるとハムストリングス(大腿二頭筋、腿の裏側)が活動する。このように、筋活動の変化が本システムによって容易に評価することができた。
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