人間が健康で活動できるためには、移動つまり歩行できることが基本にある。そして、歩行を可能にするためには、立ち上がれることが前提となる。本年は、トータルウェルネスシステムに組み込む基礎動作である、椅子立ち上がり動作を対象に、最小限に必要な下肢関節トルクと下肢筋張力発揮について、実験およびコンピュータシミュレーションを用いて研究を行った。 その結果、立ち上がり動作を達成するための最小下肢関節トルクは、股関節と膝関節の合計値が1.56Nm/kg以上であれば、力学的に立ち上がり可能である事が明らかとなった。足関節トルクは必ずしも必要ではなく、足関節トルクが大きく働く歩行とは異なることが明らかとなった。また、立ち上がり動作を達成するための最小下肢筋力についても、下肢8筋(腸腰筋、大殿筋、ハムストリングス、大腿直筋、広筋群、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋)の等尺性最大筋張力の合計値が50N/kg以上であれば、力学的に立ち上がり可能であることも明らかとなった。以上より、椅子立ち上がり動作における下肢の関節や筋において、運動達成には、関節間(股関節と膝関節)もしくは筋間(大殿筋、ハムストリングス、大腿直筋、広筋群)で相補的な関係をもつ、最小レベルがあることが定量的に示された
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