【目的】:3年目にあたる平成21年度は「新しい予測判断トレーニング・プログラムの開発及びfMRIを用いたトレーニング効果の確認」を研究の目的とした。研究では、これまでに開発したCG技術を応用し、テニスのサーブレシーブを対象として実際のゲーム場面に近似したより精度の高い3次元のバーチャル空間を作成する。さらに、これまでの視線配置研究から予測判断に重要な要素と抽出し、トレーニング・プログラム開発に用いると共に、予測メカニズムを明らかにするために脳活動をfMRIを用いて測定した。得られた結果から予測判断メカニズムについて検証するとともに、予測判断トレーニングのプログラムの開発を目指した。 【方法・結果】:実験では具体的に、以下の点について検討を加えた。 予測判断促進要因の同定およびトレーニング・プログラムの開発:トレーニング・プログラム開発のために必要な予測判断を向上させる要因を特定する実験をテニスのサーブレシーブを対象として行った。その結果、インパクト直前の150ms間におけるラケット周辺への注意の配分が重要であることが指摘された。そのため、トレーニング・プログラム開発においては、インパクト直前のラケットへの注意配分を促す内容を構築した。さらに、熟練者と初心者を比較した遮蔽実験より、サーバーの色情報と形態情報が重要な要素でもあることが指摘された。 fMRIを用いた実験では、予測期間中に島皮質の活動が見られたが、これらの活動に加えて弁蓋部の活動も観察された。これらのことから、タイミング関連の予測としては、補足運動野・弁蓋部が関与し、さらに注意配分においては右前頭部の背外側前頭前野が関連していることが指摘され、トレーニングによってタイミング関連領域の活動および注意配分関連領域の活動に変化が生じる可能性が指摘された。
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