研究概要 |
本硬究では,運動時の熱放敏機能を運動に関わる要因の相互作用から検討すること,また,それらの相亙作用と運動トレーニングとの関係を明らかにすることとした.平成20年度では筋機械受容器と筋代謝受容器との相互作用が熱放散反応に及ぼす影響を検討するため,まず,活動筋収縮時に加圧を行う筋加圧負荷システムを構築した.このシステムでは大腿直筋収縮時のみ大・下腿を加圧するもので,これにより筋収縮時に筋変形を大きくし,筋機械受容器からの入力を大きくすることが可能になる.安静時に50,100および150mmHとリズミック(各負荷3分間,1分間に50回)に加圧すると平均血圧は加圧前より大きく変化しなかったが,心拍数はいくらか増加し(有意),一方,圧差による違いは認められなかった.このことから,本システムが筋機械受容器をより刺激することができることを確認できた.次に環境温35℃,相対湿度50%の環境下で,60分間仰臥位安静を保持した後,最大随意筋収縮の50%静的掌握運動を非利き腕で1分間実施した.運動終了直前に上腕を250mmHg圧で2分間阻血し,この期間に30W自転車運動を2分間行った(回転数は50rpm).運動中,被験者の両大・下腿にカフを巻き,大腿直筋の筋収縮時に100mmHgで加圧した.阻血中に運動+加圧条件(筋代謝受容器と筋機械受容器の相互作用がより大きいとき)と阻血中に運動のみを行う条件(筋代謝受容器と筋機械受容器の相互作用が小さいとき)での生体反応を比較すると,心拍数には両条件でいくらか差があったが,熱放散反応には顕著な差は認められなかった.このことから,筋機械受容器との相互作用は熱放敏反応に大きく影響しない可能性はあるが,本実験ではセントラルコマンドの関与を除去することができないため,その相互作用の影響はさらに検討する必要がある.
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