平成20年度は、19年度の実績をベースに次の実験を実施した。 1.脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の脂肪及び血管内皮細胞への分化に対する運動トレーニングの影響を検討した。運動トレーニングは、ラットに週5日、9週間のトレッドミル走を行った。その結果、運動トレーニングは、ADSCの脂肪細胞への分化を抑制し、血管内皮細胞への分化を促進させることによって、脂肪組織当たりの脂肪細胞数の減少と血管内皮細胞数の増加を引き起こすことが示唆された。 2.急性運動による脂肪細胞の脂肪分解反応のメカニズムをラットのトレッドミル走により検討した。その結果、運動直後、3時間後に観察された脂肪分解反応の亢進は、ホルモン感受性リパーゼタンパク質のリン酸化の増加と、その後の細胞内局在変化により調節されることが示唆された。一方、24時間後のアゴニストによる脂肪分解反応の有意な低下は、この時間にみられるβ_2-アドレナリン受容体(β_2AR)発現の低下に起因すると考えられた。 3.トレッドミルを用いた運動トレーニング(週5日、3週間)による自然免疫系におけるマウス・マクロファージ機能の修飾を検討した。その結果、運動トレーニングによるマクロファージβ_2ARの発現量の低下は、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を増強し自然免疫系での殺菌能を亢進した。加えて、細胞性免疫を司る1型Th(Th1)反応は細胞内感染防御に重要な反応であることから、運動トレーニング群のマクロファージに認められたTh1反応誘導性サイトカイン(TNF-_α、IL-12、IFN-_Y)産生能の上昇は、細胞性免疫応答における感染防御能の増強を示唆した。 4.ライチ由来新規低分子ポリフェノールは、マウスの強制水泳による疲労を酸化ストレスの増加を抑制することによって軽減した。 こうして、運動と脂肪組織とマクロファージの有機的なトライアングル関係を提案し、ある程度実証することができた。
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