研究概要 |
我々はすでに中高齢者の変形性膝関節症(膝OA)に対して,疼痛および運動機能低下を予防するための介入として実施する運動プログラムを開発してきた。本研究は,その運動プログラムを改変しながらヘルスケアサービスとして実施し,効果が得られる対象の範囲(運動介入の適用)や,運動介入の実施によって疼痛緩和が生じる機序を明らかにすることを目的とする。 H19年度には55歳から75歳までの中高齢女性を対象に運動介入前後における膝関節周囲の各種画像の撮像,理学療法検査,運動機能検査などを実施し,運動介入の効果やその原因について検討した。医師の診察により行われた隙学的評価による膝OA分類では,40%がgrade2で最も多く,次いでgradelとgrade3がそれぞれ24%と22%であった。また,grade4が10%,grade5が4という内訳であった。このgradeを要因として疼痛,自己記載式膝OA機能評価表(WOMAC),各種運動機能などの初期状態が異なるかを統計学的に解析した。しかし,現時点ではgradeによる主効果が認められたのは関節可動域のみであった。同様に,gradeの違いにより運動介入効果に差を生じるか検討した。ビジュアルアナログスケールおよびWOMACをアウトカムとした検討では,gradeによる主効果がなかった。MRI像の読影結果において,約50%の参加者に半月板損傷が認められた。しかし,その中で疼痛などの症状が改善しないものはいなかった。これらの結果から,膝OAに対する運動療法介入の開始時点において,膝OAのX線学的評価によるgradeやMRI像の読影による半月板損傷の有無などで介入効果の適用を判断することは難しく,運動療法効果の適用範囲は幅広いことが示唆された。
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