研究概要 |
昨年度に引き続き,日常生活が自立している55歳から75歳までの女性で,整形外科医に膝OAと診断され運動療法が問題ないと判断された症例を対象に,運動療法による介入を実施する無作為化比較対象試験(RCT)を行なった。3ヶ月間の運動プログラム介入前後に得られた主観的疼痛(VAS)および主観的な疼痛と運動機能のスコア(WOMAC),理学検査結果,関節可動域(膝関節屈曲と伸展の自動と他動),筋力(膝関節屈曲と伸展,下肢伸展),それ以外の各種運動機能,形態計測(大腿脛骨角:FTA,内顆間距離)などを計測した。さらに,介入前のMRI画像の読影から半月板の状態に関する所見をまとめた結果,およびRCT参加者の一部に対して実施しか電流知覚閾値の結果を示す。 VASとWOMACは群要因(介入群,対照群)と時期要因(介入前後)に交互作用があり,介入群は昨年度と同様に有意に改善していた。交互作用が有意であり介入群において明らかな改善が認められた項目は,関節可動域の一部,筋力,筋柔軟性を示す長座体前屈と膝窩角,などであった。平衡機能を含めた複合的な運動機能を示すファンクショナルリーチ,timed up and go(TUG),片脚立ち時間,歩行速度などには交互作用がなかった。また,形態計測の結果(FTA,内顆間距離)についても交互作用がなかった。今回の参加者の半数以上で,MRI所見によって半月板損傷が疑われた。また,理学所見でMcMurray testの結果を要因とした検討によって,陽性となった対象者においても有意にWOMACが改善していることが示された。電流知覚閾値は無髄C神経を検査する5Hz,および太い有髄A神経を検査する2000Hzは変化しなかったが,細い有髄A神経を検査する250Hzにおいて閾値が有意に低下した。
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