研究概要 |
単球は,Toll-Like-Receptor(TLR)によって抗原を感知して貪食し,抗原提示細胞として,T細胞と結合する.抗原提示細胞上のCD80受容体は,T細胞上のCD28受容体と結合し,補助刺激シグナルを伝えることで,T細胞を活性化させる.しかし,加齢と共にCD28の発現が減少することが報告されており,結果としてT細胞の活性能が低下すると考えられる.本課題では,運動によるT細胞の増加がT細胞活性経路の亢進による影響かどうかについて検討する.本年度は,継続的な運動トレーニングが血中T細胞の活性経路に及ぼす影響を検討することを目的とした.日常の身体活動がCD28発現ヘルパーT(Th)細胞に及ぼす影響を検討したところ,高レベルの身体活動を行う中高齢者は,運動習慣の無い中高齢者に比べてCD28発現Th細胞数が少なかった.従って,中高齢者において,CD28発現は運動に応答する可能性が示唆された.また,継続的な中等度運動トレーニングの影響を検討したところ,3か月間のレジスタンストレーニングによって,Th細胞数,細胞傷害性T(Tc)細胞数およびCD28発現Th細胞数は変わらなかったが,CD28発現Tc細胞数は増加した.また,TLR-4発現CD14細胞数は減少した.さらに,6か月間の複合トレーニング(レジスタンス+持久性)によって,Th細胞数とCD28発現Th細胞数が増加した.以上の結果から,CD28発現は中等度運動トレーニングによって増加する可能性が示唆された.このことから,トレーニングによって,加齢に伴い低下するT細胞の活性能が維持もしくは高まる可能性が考えられた.
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