研究概要 |
分泌型免疫グロブリンA(secretory immunogrlobulin A:SlgA)は唾液や涙,腸間膜においても分泌され,病原体の粘膜下への侵入を防ぐ役割を持つことから,粘膜免疫系における主要なエフェクターとされている.成熟したB細胞よりIgAは分泌され,上皮細胞の基底膜に発現するpIgRと結合し,SlgAとなり分泌される。継続的な運動は,唾液S豆gAの分泌を増加させるとされている.本課題では,SIgA分泌過程において,運動による変化がどのポイントで生じているのかを検討することで運動によるSIgA分泌の変動のメカニズムを探る.そこで,運動が脾臓および腸間膜リンパ節におけるリンパ球に与える影響について検討することを目的とした.20ヶ月齢の高齢ラット(n=27)を対象とし,運動群(n=18)および非運動群(n=9)に分けた.運動群は,トレッドミルによる走運動を1日30分,週5回を10週間継続して実施した.速度は15m/minから開始し,10週間後では22m/minまで達した.なお,傾斜は0。とし,電気刺激は用いなかった.各群ともに運動期間終了後にと殺し,脾臓および腸管膜リンパ節を摘出し,T細胞,ヘルパーT細胞,細胞傷害性T細胞,CD28発現T細胞,B細胞およびlgA発現B細胞の割合をフローサイトメーターを用いて測定した.腸間膜リンパ節のT細胞,ヘルパーT細胞,細胞傷害性T細胞,CD28発現T細胞,B細胞およびIgA発現B細胞について,両群間に統計的な有意差は認められなかった.脾臓のヘルパーT細胞,細胞傷害性T細胞およびCD28発現T細胞は非運動群に比べて運動群において有意に高かった(p〈0.05).B細胞については,有意な差は認められなかった.運動によって,ヘルパーT細胞細胞傷害性T細胞およびCD28発現T細胞が増加したこと,またB細胞が変動しなかったことから,運動によってB細胞よりもT細胞によるIgA調節能の経路が亢進する可能性が考えられた.
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