研究概要 |
食習慣は免疫機能に影響を与える因子のひとつであり,乳酸菌が免疫系に影響を及ぼすことが報告されている.運動による免疫機能の改善に加え,栄養剤や栄養補助食品の摂取によって免疫機能のさらなる亢進が期待されることから,運動と食品が免疫機能に及ぼす影響を検討することは,高齢者の免疫機能の低下の改善のための重要な課題となる.乳酸菌は,粘膜免疫能の亢進や抗炎症作用を示すと報告されている.しかしながら,乳酸菌が運動由来の免疫応答に及ぼす影響について検討した研究は無い.そこで本研究では,乳酸菌が運動由来の免疫応答に与える影響について明らかにするため,乳酸菌と運動の組み合わせが免疫機能に及ぼす影響について検討することを目的とした.低身体活動量(3,500歩/日以下)の高齢者を対象とし、乳酸菌摂取+運動実施およびプラセボ摂取+運動実施の2群に分けた。乳酸菌(b240株)飲料またはプラセボ飲料の摂取およびウェイトトレーニングを12週間継続して行った。結果として,唾液分泌型免疫グロブロリンA(secretory immunogrlobulin A: SIgA)分泌量は,摂取期間において乳酸菌群が有意に高かった(p<0.05).また,リンパ球および単球において,有意な群間差は無く,有意な変動は両群とも認められなかった.ナチュラルキラー細胞活性は,有意な群間差は認められなかったが,12週間後において両群とも有意に増加した(p<0.05).高感度C-reacted proteinについて,有意な群間差は認めれれず,また両群とも有意な変動は認められなかった.日の平均歩行量は,両群ともに有意に増加した(p<0.05).以上の結果から,低身体活動量の高齢者に適度な運動を実施してもらった場合,乳酸菌の摂取は唾液SIgA分泌量を高める可能性が示唆された.
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