本研究は、メタボリックシンドロームのリスクが高まる中年を対として、筋力・筋量を中心とした体力要因とメタボリックシンドローム関連因子の関係性を明らかにすることが目的である。初年度では、中年者約300名を対象として、メタボリックシンドローム(MS)予防のための筋量・筋力の基準値作成作業を行い、基準値を定める上で、重要な基礎的データを得ることができた。本年度では、筋量・筋力の基準値作成について、対象者数をさらに追加し、基準値作成のためのデータベースをより強固にすることと、これに加えてMSに強く影響を及ぼすとされる身体活動量や有酸素性能力のような体力についてもMS予防のための基準値の作成を実施した。また、筋力トレーニングと有酸素性運動を組み合わせた複合型運動トレーニングがMSに及ぼす影響についても検証をおこなった。本研究の成果として、約500名のデータベース(初年度は300名)を基にMS予防のための筋量・筋力の基準値が男女別に示された。また、MS予防のための身体活動量の基準値も示され、厚生労働省で推奨される生活習慣病予防のための身体活動量の基準値23METs・時よりも若干高い活動量がMS予防には有効であることが示唆された。MS予防のための筋力トレーニングプログラムの作成については、有酸素性運動トレーニングのみでもMS改善効果は得られるものの、体重の減少とともに筋量の減少が生じるデメリットがあることが示唆されたことから、筋力トレーニングを併せて実施する複合型運動トレーニングの方が、筋量や筋力の維持・増進、いわゆる基礎代謝量の維持・増加という観点でみると、MS改善・予防により有効である可能性が示唆された。
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