研究概要 |
神経工学的立場から中高年者でも安心して個人個人の体力の変化にあわせた負荷重量設定や休息と運動の時間配分を実現できるようにすることを目的に,ストローク毎やセット毎に計測・解析システムが行えるユビキタスシステムの検討を行った. この検討のために,スクワット運動実験とトレッドミル歩行実験を行った.スクワット運動実験は負荷を高めるためにチューブ負荷で行い,100ストロークを連続で実施した.トレッドミル歩行実験は,1.5km/hの速度で5種類の傾斜を設定して行い,ひとつのトライアルを10分とした. 被験者は健康な成人男性10名(23.0±0.9歳)とした.被験筋は,外側広筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,腓腹筋である.表面筋電図の振幅情報である整流化平均値(ARV)と,周波数情報である平均パワー周波数(MPF)を求め,運動中の筋活動状態の変化を調べた. スクワット運動では大腿二頭筋において,ストローク数の後半にARV,MPFの変化が見られた.しかし,トレッドミル歩行実験においてはMPFの顕著な変化がみられなかった.つまり,スクワット運動のような高負荷トレーニングではARV,MPFの推移から筋疲労による筋活動状態の変化を捉えることができるが,歩行トレーニングのような低負荷のトレーニングではその変化を捉えにくいことが分かった. これらのことから,中高年に対する運動処方において,高負荷のトレーニングは筋活動の変化に着目することで,個人に合わせた運動処方を提供できる可能性を示せた.しかし,中高年は膝関節への負担という面から,低負荷トレーニングが重要となる.このため,低負荷トレーニングにおいて,筋活動状態の変化を捉える指標を今後検討していく必要がある.
|