研究概要 |
111名の肥満小児(平均年齢9.1±1.9歳、平均肥満度39.9±19.2%)を対象に母親の妊娠前の体重、BMIとその子の出生時の体重について検討した。母親の妊娠前体重と出生時体重は、r=0.292,P<0.01、BMIはr=0.217,P<0.05の相関関係を示し、標準体重児同様、肥満小児においても母親の妊娠前の体型と出生時体重が関連することが示唆された。一方、25名の肥満小児(平均年齢10.4±1.7歳)に対する運動療法と食事療法を併用した減量プログラムを実施し、その前後で経口糖負荷試験(OGTT)によるインスリン抵抗性の評価を行った。3ヵ月間の介入により肥満度は50.1±15.5%から26.3±13.6%へと有意に減少し(P<0.001)、それに伴いインスリン抵抗性の指標となるOGTT時におけるインスリン曲線下面積(IAUC)も7843.5±42342μU/ml/minから5195.0±2534.3/μU/ml/minへと有意に減少した(P<0.001)。一方で出生時の体重とIAUCとの相関関係は減量前においてr=-0.363,P=0.075と出生時の体重が低いほどインスリン抵抗性が高い傾向を示し、この傾向は全体としてインスリン抵抗性が減弱した減量後においても保たれたままであった(r=-0.396,P=0.084)。以上の結果より、出生時の体重が低かった肥満小児ほど強いインスリン抵抗性を示し、その傾向は減量が進んだ後も残存する可能性が示唆された。これらの結果は低体重で生まれた子どもほど将来2型糖尿病を発症しやすいといった成人病胎児期発症説を支持するものであり、母胎の妊娠前、妊娠中における栄養状態(体重、BMI)の管理が次世代の子どもたちの生活習慣病発症に深く関わっていると考えられた。
|