生活習慣病胎児期発症説からすれば、生存のために栄養吸収率を高め脳や重要な器官へのエネルギー供給を行うと同時に、無駄なエネルギー消費を抑えている(身体活動量を少なくする)可能性が考えられる。そこで、本年度は社会心理学的な影響の少ない(より動物的な)幼稚園児を対象に出生時の状況と日常生活における身体活動特性との関連を検討した。 対象は平均年齢5.6±0.6歳の幼稚園児209名(男児108名、女児101名)とし、出生時の状況として母親の妊娠週数と児の出生時体重を聴取した。身体活動量はスズケン社製ライフコーダーEXを用い、起床時から就寝時まで平日5日間、休日2日間を含む1週間、連続で装着させた。 母親の平均妊娠週数は39.1±1.1週、児の平均出生体重は3084.6±431.6kg、1週間の平均歩数は13026.9±2669.3歩であった。妊娠週数37週未満の早産、42週以上の過期産を除いた正規産であった幼児のみで出生体重と1週間の平均歩数との相関解析を行ったところ、r=0.163、P<0.05の有意な正の相関関係が認められた。以上の結果より、正規産で出生体重が小さかった者ほど、幼児期においても日常の身体活動量が低く、エネルギー消費量は少ない傾向にあると考えられた。 こうしたエネルギー消費量の低値が長期間にわたることにより、脂肪の蓄積(肥満の形成)や糖・脂質代謝の異常など将来の生活習慣病・メタボリックシンドロームの形成と関わることが予想され、妊娠期や妊娠前における母胎の栄養・体重管理の重要性が示唆された。
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